《MUMEI》

その日、会社帰りの電車から降りると

駅のホームで若い男が一人で騒いでいた

「せんぱーい!!どこいったんスか!?せんぱーい!!!」

ろれつが回ってなくて、足元もフラフラとおぼつかない…

その若者は明らかに酔っぱらっていた

電車からは大勢の乗客が降りたが、皆その若者を迂回するように改札口へ歩いてゆく

俺もその若者に関わらないよう、彼の脇を通りすぎた

「うぉらぁ!!せんぱーい!!逃げたんスか!?ぎゃはははは!!」

通りすぎてもなお、若者の叫び声が追いかけてきた

この若者が一人で騒いでいる理由など容易に想像できる…

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