《MUMEI》

一瞬のことで俺と彼女は混乱していた

その混乱が怒りに変わるより早く…

「すみません!!!」

その男は仕切り板越しに謝ってきた

その声と交錯するように、俺の影に隠れていた彼女が室内に逃げ戻った

怒りより早く謝られたので、俺は冷静さを取り戻すことができた

「なにやってんだよ…」

最初に出た言葉がこれだった

彼女はベランダの出入口でカーテンで身体を隠しながら

俺とその男のやりとりを見守っていた

「すみません…楽しそうな声がしたんで、気になって…つい…ほんとすみません!」

男は懸命に謝っていた

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