《MUMEI》
楽しく下校
   〜麗羅視点〜


歩がクラブに行ったので、3人で帰っていると海がニヤニヤした顔で先程と同じ質問をしてくる。


「麗羅ちゃん、屋上から出てくるの遅かったけど歩と何してたの?」



「話をしていただけ」


私がそっけなく答えると、更に海の顔はニヤニヤ度を増す。


そして海は新たな質問を投げかける。


「何の話?」


「その顔……気持ち悪い。友達になってただけ」


ニヤニヤ度が増した海の顔は、1言で表すと"台無し"。


せっかく端正な顔立ちしてるのに。


私の返答を聞いた栄実は、嬉しそうな顔をして口を開く。


「じゃあ私たち4人はみんな友達だね」


言い終わると栄実は、にっこりと微笑んだ。


人の笑顔を見るのは……嫌いじゃない。


心がポカポカする。



「俺の顔が気持ち悪いっていうのはスルーなの!?」


和やかな空気を破ったのは海で、必死の形相で栄実と私の顔を交互に見ている。


何も言わない私に、海は諭すように優しい口調で話し出す。


「あのね麗羅ちゃん……。1回しか言わないからよく聞いてね?



キモイより気持ち悪いの方が傷つくんだからっ!」


最後の方は、早口で女の子みたいな喋り方だった。


「…………。


そうだったのか。次からは気をつける」


キモイより気持ち悪いの方が、人を傷つける言葉だなんて知らなかった……。


気をつけよう。


反省をしていると、海が私に笑いかけてくる。


「まぁ麗羅ちゃんだから許すけど!


ってゆうか本当は怒ってないし、そんな傷ついてもないから」


すると栄実が、海を見上げて質問する。


「栄実が海に"気持ち悪い"って言ったら許してくれないの??」


「許すわけないでしょ!!」


海は間髪入れずに栄実に言葉を返す。


栄実は口を尖らせて斜め下を向く。


そんな栄実を見て、海は満足そうに笑っている。




昨日栄実と別れた道に着くと、栄実と海が口を開く。


「じゃあ俺達こっちだから」


「麗羅また明日ね」


2人の言葉を聞き立ち止まると、さっき歩に手を振ったように2人に手を振る。


そんな私に2人は微笑みかけると、笑顔のまま去って行く。


2人の背中を見送くる。何となくそんな気分になったから。


初めてできた"友達"。


2人の背中を見ながら今日の出来事を思い出していると、ある光景が目に入る。


…………!


ふ〜ん。そうだったのか。まぁそんな驚くことでもないか。


2人の背中が見えなくなるのを確認すると踵を返し、私も自分の家へと向かう。

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