《MUMEI》
幼なじみ
   〜歩視点〜


部活が終わると、マネージャー希望の女の子が、笑顔で俺に駆け寄ってくる。


「歩〜!お疲れ様!」


「おう、美早希!


お前バスケ部のマネージャーの話とか、1回もしてこなかったから、バスケ続けるのかと思ってたぜ」


流れ出る汗を拭いながら美早希に挨拶を返し、今日感じたことを話しだす。


「う〜ん。実は悩んでるんだけどね」


美早希は、眉毛を下げ顎に手を当て悩んでいる素振りを見せる。


「ふ〜ん。お前上手いのに勿体無いじゃん!」


美早希の言葉に、若干目を丸くする。


迷ってるならバスケ続ければいいのに……。


真剣に考えているとと、美早希は軽口を返す。


「まぁね、ちょっと勿体無いかなっとは自分でも思う」


「自分で言うなよ!だったら続ければいいのに!」


美早希の軽口に笑いながらツッコミを入れ、先程思ったことを口にする。


「う〜ん。マネージャーになれば歩と一緒に居れるかなっと思って」


美早希は笑顔で言う。普通ならトキメキポイントかもしれないが、俺達の間にはそんなもの存在しない。


もちろん良い意味で。


「お前昔から変わんねぇな」


そう。美早希と俺は所謂幼なじみって奴だ。


小さい頃からずっと一緒で、1番長い時間を共有してきた――兄妹みたいな存在。


美早希は、そこ等辺の男よりずっと男らしくて、一緒にいて楽だ。


「でもバスケ好きだし、続けようかな?」


美早希はまだ迷っているようで、視線を下に向け考え込んでいる。


「そうしろよ!」


美早希の背中をぽんっと叩き、笑顔を向ける。


「でも挨拶しちゃったしな」


気持ちは選手になることに向いているようだが、挨拶してしまったことが気になるらしく、唸っている。


「大丈夫だろ!そんな心配なら代わりの子連れてくりゃいいじゃん」


俺の提案に美早希は、その手があったかっとでも言うように手をポンッと叩く。


「歩、たまにはいいこと言うじゃん!」


「たまには言うなよ〜!」




「まだ残ってたのか、早く帰れよ」


2人で笑いあっていると、後ろの方から声をかけられそちらに振り向く。


振り向くと、キャプテンが体育館のドアから顔を覗かせている。


「「はいっ」」


2人の返事が重なる。美早希は「じゃあまたね」と言ってキャプテンの元へ走っていく。


美早希はキャプテンと向かい合うと、何度か頭を下げる。


マネージャーではなく、選手になることを詫びているのだろう。


そんなことを考えながら体育館を後にして、着替えを済ませ家に帰る。

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