《MUMEI》

H樹は就職活動の一環で、ある地方都市を訪れていた

地方都市といっても、俺とH樹が通う大学がある街とそんなに離れていない場所で

電車なら2時間、車で高速を利用すれば1時間半くらいで行ける距離だ

H樹は、その地方都市でタクシーを利用した

駅前で拾ったタクシーの運転手に目的地を告げると

タクシーはその目的地に向かって走り始めた…

「あら、お客さん若いわねぇ?学生さん?」

気さくにH樹に話しかけてきたタクシーの運ちゃんは、30代半ばくらいの女性ドライバーだった

オバサンの容姿は、お世辞にも綺麗とは言えず、当時有名だった女子プロレスラーのアジャコングみたいだったそうだ

アジャコングを知らない人は、北斗晶のイメージを当てはめてほしい(たぶん似たようなキャラだ)

H樹は、最初はそのアジャ…いやオバサンを優しい人だと思ったそうだ

車内でも「この街は初めて?」とか「就職活動なの?大変ねぇ笑」とか

そのタクシーのオバサンはH樹にあれこれ話しかけてきたそうだ

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