《MUMEI》

「ここら辺の魔物狩り尽くしちゃったし、ちょっと移動しない?」

「うーん。」

瞳を右往左往させながら、次の判断を考える。

確かに半径二、三百メートルに魔物が見当たらない。半径一キロメートル位を斬り倒したが、オートで発生したせいだろう。

「…そうね。二、三キロ移動しようか。」


額の汗を拭う為に掌が視界の隅に映ると、中指にはめてある指輪がライトグリーンに発光していた。

これは誰かからメッセージが来ている事を知らせる発色である。

「あれ、メッセージだ。」

「あ、あたしにも来てる。」

ウィンドウを指輪から出し、これもまたライトグリーンに光るメッセージ欄に軽く触れる。

送信者 カケル。

「「至急、オリガルト前の草原に来てくれたまえ?」」

送られていた内容がアカネと同じだったらしく、綺麗に喋る速度までがハモってしまった。

「文末がふざけてるから急がなくても大丈夫そうね。」

私がもう手馴れた事だったので、ドライめにそう言うと、アカネが隣でクスッと笑ったのが解った。

アカネの方を向くと、思っていた以上に腹を抱えて爆笑していたので、目を丸くして暑さのせいではない汗を浮かべてしまった。

「いやぁ、ハル達って仲良いよね。」

「…………。」

口の両端を下に下げ気味に嫌な顔をして見せたが、案外嬉しくて、五秒と保てず顔を背けてしまった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫