《MUMEI》 昼休み。僕に友達はいないため、当然一人で食べるのだが、場所は教室ではなく屋上。 雲を眺めながら弁当を食べる。雨や雪のときは雲がよく見える体育館の二階席。 雲は自分を律してくれる。 雲がゆったりと大きく動く姿を見て思う《僕はなんて小さく、世界は大きいのだろう》と。 「いたいた。昼ご飯、良かったら一緒に食べない?」僕が嫌う人間ベスト3。3位.他人のケンカに巻き込む人間。2位.アメリカ人ぶってフレンドリーに声をかけてくる人間。1位.プライベートの時間を邪魔する人間。 見事1位の人間になった彼女は、壁に寄りかかり僕の隣りに馴れ馴れしく座った。 「雲って良いよね、なんか自由って感じがして…あっそうだ、クッキー食べない?、昨日は結局食べなかったんだよね〜」どうやら僕は、異性として彼女に好かれたらしい。これは考え過ぎではない。説明を加えると、彼女が友達欲しさに声を掛けるなら、もっと会話が出来る人を選ぶ。では、第一印象が孤独な僕に同情してるか……それはない。転校して間もないのに、そんな余裕はあるわけがない。そうなればいじめられてるからも消える。初日では考えられないからだ。 つまりあらゆる可能性から考えれば、彼女が僕に恋をしたというのは信憑性が高い。迷惑だな。僕はなにより独りでいることに幸せを感じてる。可愛い人から好かれるというのは、嬉しいことなのだろう。けど、僕にそのよさは分からない。そもそも恋人を作り結婚すること事態無駄だ。 「我ながら美味しい。やっぱおやつは外に限るな。新井くんて、クッキー嫌い?全然食べてないけど……」 「………嫌いではないよ」自分で稼いだ金をなぜ赤の他人に投資しなきゃいけないない。好きだから?。馬鹿馬鹿しくて鼻で笑ってしまうのは孤独だから?愛が分からないから?違う、[好き]という理由があまりにも軽いからだ。 「美味しい?」 「うん、美味しいよ」たとえ不味くても、これしか答えようがないことに腹ただしい。正直にいってほしいと言っときながら、不味いと言えば結局美味しいという言葉が欲しいがゆえに嫌われる。矛盾にもほどがある。 「私もう行くけど、新井くんはどうする?」今から教室に行けばちょうど5分前か……嫌なタイミングだな。「もう少し…したら行くよ」狙ってたなら大した女だ。 「そ、じゃあまた教室で」 午後の授業は体育から。適度な運動は好きだ。健康的でスッキリする。僕は日課として朝に軽くランニングをしている。以外かもしれないが曲を聞きながらだ。最近は児・破天荒(じ・はてんこう)というパンクロックをよく聞く。自分にはない、馬鹿さが全面に出ていて、イライラの向こう側にある爽快さを与えてくれる所が好きだ。 「今日は外だが、何かやりたいことあるか〜」 体育に限らずたまにこういう教師がいる。良く言えば自由。悪く言えば職務放棄。僕は後者だ。やることぐらいは決めてほしい。 すでに生徒の間で野球にしようという意見が出てきた。サッカーに比べれば動きは少なく、楽しいから僕は賛成だ。こういう場合、だいたいクラスでテンションが高い順にバッターが決まる。はっきり不公平だ。ここはじゃんけんが一番公平で、シンプルだ。ここに強くこだわりを持てば、子供臭くなるのにもイラっとくる。正論を言って馬鹿にされるのだから。 さて今日も終わった。いつもなら安心する僕だが、昨日のこともあり帰りのルートを苦汁にも変えようと思う。 「新井くん」 校内で声を掛けてくることに驚きはない。むしろ想定内。言うことも「一緒に帰ろ」だ。 「今日は寄るとこがあるから一緒には帰れないよ」 「買い物(・・?」 「そんなとこ」 「私も付き合って良い(^^?」これは想定外。けど、断る理由はいくらでもある僕に有利だ。 「プライベートのことだから独りが良いんだ」用事を作った時点で君は詰まれている。崩したかたったら、そこまで想定しておくべきだったな。 「それ…ウソでしょ」!?っ…「私を避けてるだけ。新井くんて嘘つくのヘタだよね(笑)。肝心なところでボロ出してさ」…………「今日は一人で帰るね。また明日」 前へ |次へ |
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