《MUMEI》
『俺』の覚悟。
『僕』と『俺』は、感覚と意識を共有している。
主人格の『僕』がケガをすれば、『俺』も同じ痛みを負う。
さらに思っていることすらもわかってしまう。
『俺』が考えていることは、それを断絶することだった。
共有することを、拒否する。
いや、それだけではなかった。
さらに、感覚を押し付けることも可能だった。
痛みを押し付ける。
それは、押し付けた側は、全く痛みを感じなくなることだ。
逆に押し付けられた側は、倍の痛みを感じてしまう。
それを聞いた時、『僕』は反対した。
それが何を意味するか、わかっているのか?と。
『俺』は……すべてを承知していた。
『俺』の覚悟は本物だった。


「体の痛みが無くなりゃ、動くことはできるだろ。いつもの動きでいきゃあ奴に勝てる」
「でも……だからって無傷でなんか無理だよ!それにもう体がボロボロなんだよ!?」
「それも全部、俺が引き受ける」
「そんなこと……!」
「その代わり!」
言葉を被せ、握り拳を『僕』の胸にトン、と当てる。
「絶対に、助けろよ」

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