《MUMEI》 「よっし、アカネとハルを呼んだから、多分二十分位で来るんじゃないかな。」 「あぁ〜早く来て欲しいなぁ!」 全く、さっきが嘘の様だ。 目の前の我が妹は存外辛抱が効かない性格だったらしく、何度これは必要な事だからと説得しても一点張りだった。 飽きた、勝てない、これじゃない。 最初はサウザーとアイも一緒にサヤを説得してくれていたんだが、泣きじゃくりながら雑魚モンスターに追われる様を見て、同情し何も言わなくなってしまった。 そして、サヤが言い出した話にまんまと乗ってしまった。というか、半強制的に乗らされた。 「なんか、射撃出来る武器が良い!弓とか…銃とか。職業に狙撃手とかないの?」 「あるけど……。」 「じゃあ、それがやりたい!だってもう、恐いんだもん。」 こういう時に限って、決まってサヤは真面目な顔で俺の目を視てくる。その感じが、このMHOでもよく出ている。 俺がその目に弱い事を知っているんじゃないだろうか。 だがしかし、そうは思っていても何も言えないで頷いてしまうのが俺という兄だ。 「分かったよ…。狙撃手用の銃なら確か持ってたから、オリガルトに行くぞ。」 「今此処には持ってきてないの?」 少し面倒臭そうに鼻を鳴らすサヤだが、持っていないものは持っていない。 「俺は愛刀の他の武器は持ち歩かない主義なんだよ。アイテムは別として。」 「何それ。カッコつけー。」 「別にそんなんじゃねぇよ。ほら、行くぞ。 置いてってやろうか?」 「それはやだ!」 周りは先程うんざりするほど闘って泣かされた魔物達だから本当に嫌なんだろうが、涙ぐむ事も無いのに。 あまりに素直な反応で、思わず笑ってしまった。 前へ |次へ |
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