《MUMEI》

はぐれないようにサヤの手を繋ぎ、馴れたオリガルトの道を行く。

程良い人の多さで、街の綺麗さが際立っている。

赤の鮮やかなレンガの街並みはなんとも周りを見渡す程に美しく、塵一つ落ちていない歩道もそれを修飾している様だ。

「その…カナって人、女の人でしょ?」

「あぁ。」

行き先は駅前通りに店を構えているカナの所だ。

俺の武器のストックは全てカナに任せっきりで、思い返せば今の俺の愛刀ドゥーカスも始めはカナに選んで貰った物だ。

カナはなんと言うか、安心して大切な物を預けられる存在だ。

「それで…ショウ兄は誰が好きなの?」

「は!?」

だからと言って、恋愛対象とか、そんなものではない。

だというのに、この妹は何を言い出すんだ…。

「ハルさんか、アカネさんか、その、カナさんって人。」

「それは俺も気になるッス!」

「ふむ…興味が有ります。恋というのは、知り得ない感情ですから。」

こいつら、ガチの目をしてやがる。

「……ノーコメントで。」

「「「えぇー!」」」

別に言っても良かったんだが、もうカナの店が目と鼻の先なので、言わないのが得策だろう。

と思っている間に、カナが此方に気付いた様だ。

隣から来る不満気な視線はカナとの会話で紛れる事を祈ろう。

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