《MUMEI》 鬼灯堕胎玖珂森 湊が自我を持ち自らを確立する頃、日本の制度は大きく変わっていった。 ニュース何かでは海外の財政悪化、テロが頻発し崩壊の一途を辿る海外に比べ日本は平和で幸福な国だと騒いでいたし、国を操っていた無能な政治家たちの集団はすべて「マザーシステム」と呼ばれる世界最高宝の人口知能によって組織解体され、今の日本の政治は全てシステムが管理している。 システムが齎した恩恵は偉大なものであり、今の日本人の生活には欠かせないものになった。 問題視されていた環境問題も、人口知能を積んだアンドロイドを巡回させる事によってゴミを減らし、少子高齢化も同性結婚を認め細胞を変化させる事での受精も可能にした。 けれども幸福の向こう側では問題も起きた。 「幸福すぎる人生をいつまでも続けたい」 そう思う人間が増え、永遠の時間を手にするために違法な手術を受け、自らをアンドロイド化する人間の増加により起こる人口爆発。 それに加えて、最高宝の人口知能を持ってしても、原因不明の現象、怪異の頻発。 システムはこれを「異常」とみなし、「特殊警察」を組織した。 特殊警察には、システムが選出した国民が選ばれる。 湊もその1人だ。 大学4年の時に就職口を探すためにシステムを覗いたら特殊警察への就職を認められた。 当時の湊にとってはあまりにも現実味がなく、悩んだが誰にでも出来る仕事ではない。 自分にしか出来ないものだと感じ就職を決意した。 そこから特殊警察学校で3年学び首席で卒業。めでたく今年「怪奇捜査部2係」への配属が決まった。 出勤当日。 人手不足により新人である湊も現場に呼び出されていた。 現場である廃棄街までのタクシーの中で湊はまだ見ぬ上司から送られてきた事件概要を読み返す。 『大島 実。男性、45歳、住所不定無職。元は管理アンドロイドの制御の仕事をしていたが不祥事によりクビ。その後、怪奇発症の兆しを見せる。』 湊はその他の資料にも目を通し終えると深くため息をつく。 そのため息は大島に対する同情からくるものではなくただ、単純に初の現場でミスをしないか心配になったからだ。 手のひらに何度も『人』を書き飲み込む。 そんな子供騙しをしてなんとか気を紛らわせる。 そして自分に言い聞かせた『絶対大丈夫』だと。 前へ |次へ |
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