《MUMEI》
命の支配
「もっと気持ち良くしてあげるから、これ…ちゃんと持って」

力の抜けた陽菜の腕を掴んで、電気マッサージ機を握らせる。

「ちゃんと気持ち良いとこに宛ててるんだよ?」

陽菜は喘ぎ声なのか呻き声なのかわからない小さな声を発するだけで、何を言おうとしているのか理解できなかったけど、もう片方の手をゆっくりと電気マッサージ機に添えたその行動は、僕に言われた通りにするということだろう。
そう判断した僕は、陽菜のいちばん奥まで一気に身体を沈ませた。

「…か…はっ……」

陽菜が目を見開き、息を漏らす。
一瞬、息が止まってしまったような、無理矢理息をさせられたような…このなんとも言えない息の漏らし方と表情が、僕は堪らなく好きだ。


ほんの一瞬だけど、陽菜の命までも支配した感覚に陥る。






……首…


………首を絞めたら…どうなるんだろう…


今まで僕を救ってきてくれた優しい声も、僕を興奮させてくれた声も…。
冷たい言葉も嘘も僕を求める言葉も全て、この細くて白い首から発せられているんだ…。



その声で真鍋も魅了されて、楽しく会話をしてきたんだ…。








───…気付くと僕の手は、陽菜の首を掴んでいた。


いや、正確には“絞めていた”んだ。
電気マッサージ機は床に転がり、今までと違う音を立てている。
陽菜は目を瞑り、顔を真っ赤にしていて、口は半開きになっているのに呻き声すら出ていない。


僕は妙な気分になった。
このまま続けていたら、陽菜は死んでしまうのではないか、という恐怖を感じる。
けど、陽菜の体内が今までとは違う感じで、僕を締め付け、その抱かれているような感覚に快感も感じる。


そして、陽菜の全てを手に入れたような感覚。


完全に僕のものになったという優越感と快感、陽菜を失ってしまうかも知れないという恐怖感。
異なった感覚たちで、僕は妙な気分になり、人間って面白いな…なんて思いながら、殺人犯はどんな気持ちで人を殺めるんだろう…とか考えてみて、僕は陽菜の首から手を放した。

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