《MUMEI》

体育館裏についた俺は愕然とした。


……だれもいない。


そりゃそうだよな。こんなところで誰かとばったり会うのは、昔の恋愛シュミレーションゲームぐらいだよな。


それなら職員室にでも行ってみるか。


「失礼します」

こんなところにいるはずもない、と思ったとおりドアを開けた瞬間に生徒が一人もいないことが分かった。


ここも外れか、仕方がない。今日のところは帰るか。
そう思い、出て行こうとした時、担任の中谷に呼び止められた。

「どうした滝沢。何かようか」

「いえ、何でもありません。しいて言うなら、屋上を使えるようにしてくれませんか」

「駄目だよあそこは、昔は使えていたみたいだけど、何かあったらしく、それ以来使えなくしたみたいだ。諦めるんだな」

「何か?それは何があったんですか」

「知らないよ。取りあえず屋上は無理だからな。勝手に入ろうとするなよ」

ここで言い合いをしていてもしょうがない。おとなしく、帰ることにした。

「わかりました。それじゃあ失礼しました」

「寄り道せずに帰るんだぞ。最近内の生徒が悪さをしているという苦情が来ているからな」

「俺が悪さをすると思いますか?それでは」


まったく。俺みたいな善良な生徒に向かって失礼な。
ようし、今日は暇だからゲーセンにでも寄って帰ろう。

言っておくがゲーセンは悪くないからな。
ゲーセン=不良という時代はとっくに終わっているんだからな。

悪くないと言い切っておきながら、言い訳のように自分の考えを付け足す自分がなぜか可愛く感じられた。

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