《MUMEI》
実戦。
「お前……なんでここにいるんだよ!!俺達が半殺しにして、もう歩けねえ体に……」
狼狽する目黒に、オレはついおかしくなって吹き出してしまう。
「なるほどな。こりゃあ新斗の大嘘が効果覿面だったみてえだな」
「嘘……だと!?」
その言葉に頷く。
「え……嘘?」
まだ騙されている美鶴も呟く。
「悪ぃな。あいつらを欺くには、お前達にも嘘を憑くしか、なかったんだ」
罪悪感はある。
新斗の作戦に乗った以上、オレも共犯みたいなものだ。
「後で気が済むほど謝ってやる。だから少し待っててくれ。こいつを片付けなきゃ、オレは次に進めねえから」
木刀を拾い、その鋩を目黒に向ける。
まだ左腕は痛む。
骨にヒビはいってたんだもんな……。まだ治りかけだから尚更だ。ギプスで固定していて満足に動かせない。
あとは左足も……か。
誤魔化しながら、勝てるだろうか。
相手は今のところ素手。だが、どこに武器を隠し持ってるかなんてわかんねえ。
でも、リーチは確実に俺の有利だ。木刀よりも長い得物なんて、そうそう無いからな。
これは、慎重に行くしかない。
これは実戦。
練習でも、試合でもない。
命のやり取りをしている、実戦だ。
勝たなければならない。
木刀を持つ手のひらが汗ばむ。
少し体が固いことに気付く。
呼吸を整えーーー
風影響介
いざ、行かん。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫