《MUMEI》

オリガルト前の草原で、アカネは眉間にシワを寄せ、私はカケルの行きそうな場所を模索していた。

「ったく、カケルのヤツ、何処に居るっていうのよ。」

後ろで雑魚を燃焼させたアカネが吐き捨てる様に刺々しく言い放った。

「こんな事でへこたれていたら先が思いやられるわよ、アカネ。」

溜め息混じりにそう忠告するが、アカネは尚もうぅ〜、と苛立ちを隠そうとはしない。

一年以上も共に過ごしていると、流石に慣れてくるものだ。しかも、怒っている人間が他に居ると、余計に怒りは消えていくというものだ。

遅刻は当たり前、悪戯もしばしば、からかうのなんて日常茶飯時。

しかも、怒ったって聞きはしない。

そんな男に約束を守る期待なんて的外れなこと、意味は無い。

「……ハル、私はオリガルトの周り全部調べるから、ハルは壁内を隈無く捜索して。見つけたらメッセージ入れて。」

しかし、何故か彼を嫌いにはなれない。

「…えぇ、分かったわ。」

理由は、自分でも判らない。

でも、なんでか、嫌いになれる気がしない。

現にアカネだって、カケルを捜す事を止めないで手分けすることを提案してきた。

「もしもハルが先にカケルを見つけたら、カケルに伝えて。次に私に会ったら覚悟しておけって。」

人差し指を私の顔に向け、目は四十五度程つり上がっている。相当だ。

「分かったわ。」

でも、なんとなく可笑しくって、クスッと笑ってしまった。

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