《MUMEI》
第十二夜 冷え性
『起きてるか』『起きてるよ』
向かいの部屋の窓の明かりが灯っているのを確認して、寝待ち月が浮かぶ空に電磁波を飛ばす。
『なぁ、覚えてるか』『何を』『子どもの頃、夜中よくお前の部屋に窓から行ったよな』『冬の冷え込んだ夜なんか、暖かいからって布団に潜り込んで団子になって一緒に寝たな』『うちの子がいないって、お袋が大騒ぎしてっとこに、二人して寝ぼけて起きてきてさ』『窓から入って来たのに、お前帰りはいつも裸足で玄関から帰んだよな』
寒がりのくせに、と言葉にはしないが。
『子どもみたいに今も体温が高いお前と違って、繊細なんだ』『馬〜鹿』『あの時、言おうとしてたのって』『いつ?』『満月の時』
 沈黙。
『なぁ、面倒だから、こっち来れば』

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