《MUMEI》

アカネと無事に合流し、今度は全員で、オリガルト前の草原でサヤの肩慣らしを眺めていた。

「これで………十匹!」

声と同時に銃声が広大な草原に響き渡った。

反響が、この土地の広さを余計に大きくしている気がした。

「凄いじゃない、サヤちゃん。」

「ありがと!やっぱり私はこっちの方が向いていると思ってたの。」

「流石ッス、ご主人。」

隣でこんなに心温まる会話をしていると言うのに、俺は仲間入り出来ずにいた。

「……だからアカネ、ごめんって。」

「無理。そんな薄情な奴だと思ってなかった。」

合流してから、ずっとこんな感じだ。

ハルは解ってて俺達を放っておいてるみたいだし、サヤは新しい武器に夢中で気付いていないみたいだし。

アイでさえ気付いていそうだが、目も合わせてくれない。

「おーい、二人共。今から皆でクエスト行くわよ。」

「「クエスト?」」

この言葉には、アカネも素直に小首を傾げる反応を見せた。

「そう。サヤちゃんの為だから、簡単なヤツを一つ。」

もうオリガルトに歩き始めているハルは、口の横に手を当てて大きな声を出している。

俺は一度アカネと目を合わせたが、アカネは大袈裟に顔を反らし、俺は若干呆れて溜め息と笑い声を溢した。

「アカネ、次は気を付けるからそろそろ許してくれないか?」

歩き出すアカネに後ろから呟くと、アカネは振り向いた。


「……次に待たせたら、切腹だからね。」


その言葉に口が丸く開いて閉じなくなった。

この世界で切腹は、そのままの意味を示してしまう。が、目が割りと本気なので困る。

「か、考えておくよ……。」

それ以上の答えは出せなかったが、顔を青ざめる俺を見てアカネは満足そうだった。

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