《MUMEI》
シフト。
振りおろした木刀は、紙一重でかわされ、空を切る。
やはり振り下ろしが遅い。
左腕の痛みに加え、ギプスで矯正されていて振りにくすぎる。
「ぐふっ」
隙が多すぎる。そのために難なく懐に入られ、目黒にカウンターを喰らう。
「はっは!対したことねえなあ!」
追撃。
カウンターで腹部に加え、顔面に一発喰らってしまう。
「い、てえな!」
腕……、小手を中心的に狙う!
軽く深呼吸し、中段の構えを取る。
落ち着け。冷静になれ。だが、闘志は燃やし続けろ。
負けねえ!
「うおおおおおお!!」
左足を蹴り出す。目黒との間合いを一気に詰める。
面よりも小さく木刀を振るう。目標は、目黒の右手。
「おっと」
難なくかわされる。
やはり予備動作が大きすぎる。
「ぅぐっ」
モロに左頬にストレートを喰らう。
呼吸が、荒い。
口の中に何かコロコロする。何かと思ったが、それが歯だと気付くのに時間はかからなかった。
ぺっ、と歯を吐き出す。
どうする。
どうやって相対する。
……予備動作で動きがバレバレなら、開き直るか。
木刀を頭上まで上げ、構える。
後退していた左足を前に出す。
中段の構えから、上段の構えに。
防御は捨てる。
ただ、目の前の男をぶっ倒すことだけに集中する。

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