《MUMEI》

「…康孝はこいつと知り合いなのね。ふうん」








「母さん」










一之瀬君のお母さんは、立ち止まって、うつむいた










一之瀬君は、ゆっくりとお母さんに近づいてる








とても 不安そうな瞳で











「……いいのよ、康孝。私は信じてるから。」










そう言って お母さんは家のなかに消えた










私は 何をしに来たのかもわからないままだ










なんて ダメなんだろう











「…もう、来ないで」










一言だけ









開いたままのドアに手をかけて





静かに閉じた









一之瀬君の最後の言葉は








喉の奥からにじみ出たような



細くて、重い声だった

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