《MUMEI》
絶体絶命。
「ああ?なんだ、その構えは」
「剣道やってねえ奴はわかんねえよな。これは上段の構えって言うんだ。別名、火の構え、天の構えとも言う」
格好いいね、マジで。
「中2か、てめえは」
「ははっ、あいにくと中1なんだよ俺は!」
右足の指一本一本に力を込め、地面を蹴った。
木刀から右手を放し、木刀を力強く振り下ろす。
それまでとはスピードが違う。
上げてから下ろす中段の構えとは違い、下ろすだけの上段の構えとはスピードもパワーもまるで違う。
しかも目黒はこの構えを知らなかった。
なら、予測もできないはずだ。
予備動作を無くすことは不可能。
なら、それをわざと大きくしてしまえばいい。
予備動作が大きくなったことで、溜めれる。
「うおおおおおお!!」
超スピードで振り下ろした木刀は、目黒の右肩に直撃した。
まだ、終わらない!
右肩をがっちりと硬め、衝撃に備える。
くらえ!当て身!
右足をドンッと踏み込んだあとの当て身。
目黒はその場からぶっ飛び、尻からダウンする。
いける。上段の構えなら、戦える!
確信し、もう一度構え、倒れている目黒に追撃した。
次の瞬間、目の前に光るものが向かってきた。
反射的に顔を反る。
光るものは頬を掠め、通過した。
なんだ、今の?
後ろから「うあっ!」と美鶴の悲鳴を聞いた瞬間に、今飛んできたものが何か、理解した。
ナイフだった。
目黒がとっさに投げたナイフは、オレの頬を掠め、後ろにいた美鶴の右腿に刺さった。
「み、みつ……!!」
思わず美鶴を見てしまった。
目黒を、視界から外してしまった。
なにかはわからない。
バットのような、鈍器で頭を打たれた。
「……!!」
不思議なことに、なんの声も出せなかった。
「調子に乗んなよ、ガキが……!」
倒れたオレは、かすかに右肩を抑えた目黒を視認した。
目付きがイっていた。
もう、殺す気満々って感じだった。
「き、響くん!!」
みつ、る……。
視界が真っ赤に染まっていく。
美鶴の右腿には、ナイフが刺さっている。
あれでは、逃げられない。
美鶴……。
美鶴、美鶴!
美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴美鶴
美鶴ーーーーーーーーーー!!!

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