《MUMEI》 野生。体が勝手に動くようだった。 恐らくどこかに隠していたのだろう、バットを高く上げ、響介の頭部にトドメの一撃を放とうとしている。 倒れていた俺は、上半身だけ起き上がり、木刀を水平に振った。 偶然か必然か、振った木刀は振りかぶった目黒の腕にピンポイントに直撃した。 「なっ!?」 振った木刀を流さず、勢いに乗ったまま、目黒に叩き落とした。 木刀はまるで吸い込まれるように目黒の頭部に直撃した。 これは、頭で考えていた動きではない。 完全に体の本能の動きが、脳の伝達を上回っていた。 「……ぶち壊す……」 無意識に、呟く。 「がああああああああああ!!!」 フラフラと立ち上がり、頭を抑える目黒に突撃。 もうそれは、剣道の型とか、関係なかった。 まるで、獲物を狩る獣のようだった。 爪を立て、深く抉るように目黒の頭部を掴み、奇声を放ちながら木刀の切っ先を腹部に突き刺す。 「ぐがっ、う、ああああ!」 痛みに悶える目黒を、響介は狂喜する。 なんとか引き離そうと、余力で響介を殴打するが、態勢が変わっただけで状況は変わらない。 目黒は後ろにのけぞり、倒れ伏す。 響介は目黒の上に飛び乗り、マウントを奪った。 まともな人間の表情ではなかった。 左手で目黒の首を絞め、右手の木刀を、目黒の咽に向ける。 いくら木刀と言えども、本気で切っ先を突けば、人間の首は貫く。 脅しでも何でもない。 響介は本気だった。 「うがあああああああああああ!!」 響介は、躊躇いなく切っ先を突き刺した。 前へ |次へ |
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