《MUMEI》
居候
今日、私の家に
お父さんの同僚の
高橋 宏さんと言う人が
居候としてやって来た。

年齢は31歳。
お父さんの10歳下、
私の13歳上。

「怜子ちゃん、ゴメンね」

そんな事を言いながら
上がりこんでくる。

「ちょっ 待って、お父さん!」

「いいだろ、お父さんと仲が良くてな。今住む所がないんだと。」

「は...!?何で?」

「家賃も払えなくなるぐらいに貧乏なんだよ、僕」

高橋さんが
苦笑しながら言う。

だからって
お母さんのいない、
お父さんと二人きり
だった生活に、
いきなり知らない人を
連れて来るとか...。

「大丈夫、宏は優しくていいヤツだから怜子もすぐに気に入るよ」

お父さんが私の頭を
くしゃっとする。

大学生の娘に
いきなりそんな事
言うなんて...。
相談してくれたって
いいじゃないの。

「怜子ちゃん、これからよろしくね」

高橋さんが私の方に
右手を差し出す。

...握手しろと?

ここで握手したら、
この人がここに
住む事を許す事になる。

でも

差しのばされた手を
払いのけるには
私の良心が痛む。

だから

「よろしく...お願いします。」

私はそう言って、
高橋さんの手を握った。

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