《MUMEI》

「あの、皆さん!」

漸く皆と一緒に並ぶ事が出来た矢先に、サヤが挙手をして立ち止まった。
その行動に、全員が足を止めて振り向いた。

「私、もう少しここで練習をしたいので、クエストって言うの取ってきてくれないですか?」

その言葉に俺は驚いた。

あぁ、いつの間にかサヤがこの世界に対して、本気になっていたんだな。

「でも、それはちょっと危ないわ。」

「大丈夫。俺が一緒に此処に残るよ。」

サヤは意外そうな顔を見せた。こいつ、本気で一人で残れると思っていたのか。

横目でサヤをチラ見してから、視線をハル達に戻した。

「クエストが決まったら戻って来てくれ。さっきみたいに何処かに行ったりしないからさ。」

少し冗談めかした表情でそう言うとハルとアカネはすぐに信用したようで「了解。」と即答してくれた。

しかし、一方でAI達は揃って不安そうに緊迫した空気を醸し出していた。

「カケル様。今は皆で行動した方が良いんじゃないでしょうか。」

「そりゃあサヤ一人だと危険だけど、俺が一緒なら話は別だろ?」

「そうなんですが!」

アイが声を張り上げた瞬間、AI達がより深く眉間に皺を寄せ、息を吸う音が聞こえたような気がした。


「「「「嫌な予感がする。」」」」


まだ真昼と呼んでいい様な時間帯な筈で、空も晴れ渡っているのに、風が嫌に冷たく感じた。

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