《MUMEI》
「ありがとう」。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
左腕が、痛む。
指先一本でも動かせば、激痛が走る。
目黒は完全に気絶しているようだ。
今にでも倒れてしまいそうになるくらい、頭がクラクラとする。
でも、まだだ。
まだ終われない。
「美鶴……」
ずずず……、と左足を引き摺り、美鶴に近付く。
「…………ごめんな」
倒れるように両膝を地面につける。
「ごめんな……美鶴。お前を守ろうって、そう決めたのに……!傷……つけちまった……」
ナイフが刺さった足を見て、強烈に胸が痛む。
「大丈夫だよ……これ、くらい」
痩せ我慢だ。
泣いている。
震えている。
くそ……くそ……っ!
涙が溢れる……。
「響くん……。大丈夫だって」
オレの頭にポン、と手を置き、グシャグシャと乱す。
「美鶴……痛い」
無茶し過ぎて、身体中が痛む。
「へへ……ありがとう、響くん」
「……え、ここでお礼言うの?」
「助けてもらったお礼はまだ言わない!嘘憑いたこと、あたしはまだ全っ然納得してないから!」
……だろーな。
「……ん?じゃあ今のお礼はなんだ?」
「あたしを守るって、言ってくれた」
…………え?
「ありがとね、響くん」
明らかに無理をしている笑顔だった。
「だから泣かないで。ね?」
「泣っ!?」
袖でガシガシと拭う。
…………あ、これって、チャンスなんじゃないか?
この間聞けなかった。
美鶴に、彼氏がいたらしいこと。
今なら聞くチャンスなんじゃないか?
「あのさ、美鶴」
「なに?」
ゴクリと、生唾を飲む。
「あのさ、もしかして、前に彼……(ピーポーピーポーピーポーピーポー)」
ナゼカ、キュウキュウシャガアラワレタ。
「え、救急車呼んだっけ?」
…………あ、目黒と戦闘になる前に、救急車と警察呼んだんだった…………。
「これで安心だね、響くん」
「……うん……」

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