《MUMEI》
伝説と言われた風魔の一族
広すぎる洋館に酷く冷たい私の声が響き出す。

――私は今、「風魔」の顔をしているのだろう。

「私の一族、風魔の一族は戦国時代より続く忍びの一族。 お金を払えば誰でも雇える。お金を払えば殺しも偵察も何でもする最強の忍びだった。
長(オサ)は風魔小太郎という伝説の忍びの名前を受け継ぎ、一族をまとめる役割をしていた。」

いつもの柔らかい口調じゃない。酷く機械的な、感情などこもらない声。

「しかし、風魔小太郎は時の権力者によって殺害され、長く続いた風魔一族は滅んでしまった。しかし、風魔小太郎の息子は里隠れしていたため殺されなかった。そして、息子が18歳になったとき、自分の親のことを知り、もう一度風魔一族を作ろうと考えた。戦争孤児や捨て子を拾っては忍びのイロハを叩き込み、強く立派な風魔の忍びにしていった。」

「そして、戦国時代が終わっても風魔の一族は滅ぶことなく、現代まで続いた。…ここまでが風魔一族の話」

「じゃあ、風魔さんはその風魔一族の忍びってことなのかい?」

話に区切りをつけると大石君がすかさず確認するように聞いてくる。

「うん。そうだよ。」

―先ほどの冷たい「風魔」の顔と声はいつもの私に戻っていた。

「へ〜、忍者って本当にいたんだね!」

背中合わせに座っていた周助君はいつのまにか私の腹に手を回して抱きつくように座っていた。

てか、周助君が忍者に食いつくとは思わなかったよ。

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