《MUMEI》
教師の顔
「中原は本音言ったんだろ? スッキリしたか?」

「ええ、清々しいです。ずっとハブは嫌だと思ってたけど、もう良いです。いずれはこうなるような気がしてましたし。……でも、少しだけ虚しいんです」

――そうなのだ。爽快感が漲っているはずなのに、胸に穴が開いたような虚無感に襲われている。そして、その穴には何かが引っ掛かっているような気がしてならない。もう自分を偽る必要はないと拍子抜けしてしまったのだろうか。分からない。

「って、何するんですか!」

「褒めてるんだよ。偉い偉い」

「そんな子供か犬にでもやるようなやり方しないで下さいよ」

前触れもなく、先生がグリグリと豪快に私の頭を撫で回してきた。いきなりの行動に柄にもなく狼狽えるも、努めて冷静に言葉を紡ぐ。すると、先生は急に真面目な顔になった。

「多分、中原は友達に受け入れてもらいたかったんじゃねぇーかな。普段は辛辣なことばっかり言ってるけどさ、本当はちゃんと仲良くなりたかったんじゃねぇーの?」

それが叶わなかったから、どこか物悲しさを感じているというのが先生の言い分らしい。私は、亜梨沙達と上辺だけの付き合いではなくて、本心から友達になりたかったのだろうか。違うような気もするけれど、先生に言われればそうだったのかもしれないと思ってみたりもする。我ながら単純だ。

「……どうですかね」

肯定だろうが否定だろうが、何か言ってもそれは負け惜しみや言い訳にしか聞こえないような気がして。みっともない真似は晒したくなかったので、曖昧に言葉を濁した。それでも先生は更に何か続けることもなく、ただ小さく笑うだけだった。

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