《MUMEI》 復讐物事は、悪い方へは一気に転がれるんだ。 相変わらず亜梨沙達とは険悪だった。いや、少し違う。確かに彼女達のことは少し気にかかっていたが、嫌悪などは特にしていなかったのだ。 ただ、彼女達は憎悪に満ち溢れた目で私を睨み付けていた。それを遠巻きに同級生達は観察し、時折ヒソヒソと話をしていた。それら一切を無視して、私は毎日を過ごしていた。 最近になって、エミリは頻繁に私に声をかけてくるようになった。多分、心配してくれているのだと思う。とにもかくにも私はその後、比較的平和に過ごしていたのだ。 だが、復讐の時はやって来る。それも、私にとって1番最悪な形で。 その日の4時間目は現代国語だった。担当の先生はあまり好きではなかったが、科目自体は好きなのでプラスマイナスゼロ、という感じだ。ただ、教室へ現れたのはいつもの40代半ばのオッサンではなかった。 「席着いてるかぁー」 ガラッとドアが開いて教室へ入ってきたのは、ジーンズにいつものようにトレーナー……ではなくて、パーカーを着た浅倉先生だった。 この時点で今日は自習だと予測がついたのはクラスのほぼ全員だろう。ラッキーと露骨に喜んでいる連中もいれば、浅倉先生でラッキーといった感じの輩もいた。繰り返しになるが、浅倉先生は生徒人気の高い教師なのだ。 「今日は、横田先生が急遽休みになったから自習な」 グルリと教室を見回し全員がいることを確認すると、先生は持ってきたプリントを列の先頭に人数分配り始めた。プリントを数えながら「終わったら回収するからなー」とフワフワと宙に浮くような声で伝えられる。 プリントは両面刷り1枚で問題数も少なかったが、難易度はかなり高そうだった。要約しろ、簡単に説明しろ、10文字以内で抜き出せなどとにかく記述が多く、プリントを目にした生徒達は「うげっ」と悲鳴を上げている。 「空欄は2つまで。分かんないとこあったら質問してくれても良いし、適当に埋めるでも良いから」 とにかく空欄を作るな、とのことだ。そんなにいい加減で良いのかと心の中で密かに突っ込みを入れながら私はシャープペンを握った。 前へ |次へ |
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