《MUMEI》 廊下と衝突始業式が始まる少し前。 皆がザワザワと廊下に出る前に角に避難していた瑞希は少し油断していたのか角の死角から飛び出る女子生徒に気がつかなかった。 ここまでくればお分かりだろう。 瑞希は彼女と見事にぶつかり倒れそうになったが踏みとどまった。 が、反対に彼女は尻餅をついてしまった。 涙目で頭を押さえる癖のついた長い茶髪に大きな薄い桃色の瞳をもつ彼女は不思議と庇護欲に刈られる。 いい例えるならばあれである。 捨て犬と駄目人間。 ここまで瑞希は考えてハァ、と小さくため息を吐いた。 マイナスにしかならない気がする。 いまだ床に座ったままの彼女の腕を引っ張り_____ _____そのままお姫様抱っこをした。 「え、え………?」 彼女は戸惑っている。 それもそうだろう。見知らぬ女子生徒とぶつかった挙げ句お姫様抱っこまでされたのだ。 「…大丈夫だよー。何処まで?送ってあげる」 瑞希が安心させるように微笑んで見せると彼女も安心したらしくぽわっ、と笑みを浮かべた。 「…屋上」 「え、自殺志願?」 「ちっ、違う違う!!」 「…冗談だから。」 ほとんど本気で瑞希は聞いたのだがあまりにも彼女が全力で否定するため、言い直した。 「はーい、屋上ね。お安い御用だよ」 もう一度彼女に笑みを向けると瑞希は屋上の方、生徒達とは反対方向に向かった。 瑞希の去った後の廊下では、男子生徒が瑞希に抱かれた女の子を思いだし、可愛かったなどと呟いていた。 前へ |次へ |
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