《MUMEI》

「このままじゃ、全てが壊れちまう。許しを乞えるものなら、乞いたいもんだよ」
一瞬、憂う様な表情を相手は店
持っていた刃物を叩き付ける様に放りだすと、身を翻した
人混みに紛れ消えていくその後ろ姿を暫く眺めていると
不意に、袖が引かれる
「……主。ごめんなさい」
謝りながら七星が触れてきたのは腕の傷
未だ流れ出る血を手で何とか抑えようとしていた
「止めとけ。汚れる」
すっかり汚れてしまった七星の手を着物袖で拭ってやり
ついでにその布を噛んで千切ると、止血にと腕へと結わえ付ける
取り敢えず、これ以上この場に留まるのは得策ではない、と
片岡は七星の手を取り、足早にその場から離れていく
「……ヒトは、やっぱり怖いよ。主……」
片岡の数歩後ろを歩きながら、七星が涙の滲む声で呟く
そうだなとも違うとも片岡には出来ず
すっかり泣き出してしまった七星を宥めてやろうと
その髪を唯梳いてやるしか出来なかったのだった……

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