《MUMEI》 〜「あの日」--ソラの回想2〜俺の家へ向かう途中、人通りの少ない裏路地に入った時のことだった。 「ゲヘヘェ…坊主、彼女と一緒に仲良くデートかいぃ…?」 突然… ガタイのいい大男が、俺達の前に立ちふさがった。 「何です?何か御用ですか?」 俺が訊くと、男は角張った顔を俺に近づけながら、こう続けた。 「俺さぁ… 新しい、"デケェ力"を手に入れてさ… ちょっと、試してみたいと思ってたんだよね。」 「それで?」 「フフゥ… そしたらぁ、おあつらえ向きにお前らが現れたってぇわけよ…」 …この男、かなり頭にキてるようだ。薬物でもやっているのだろうか? とにかく、触らぬ神に祟りなし、だ。 俺は、裾をつかんで震えているユリを引っ張り …逃げることにした。 「逃げるぞ、走れ!ユリ!」 「…おっと、逃さねぇよ?」 男はそう言うと、懐から何かを取り出した。 すると… 「何…ッ!?」 「ソラ、足がぁ… 体が、動かないよぉ…」 俺達の身体は、一瞬で… 得体の知れぬ力に、自由を奪われた。 「スターチス… 花言葉、"永久不変"…」 「なっ…!?」 訳が分からず混乱する俺達に向けて、男は、にへらと嗤った。 「グフフゥ… "華闘士"… 俺の能力の名だ。」 なおも訳が分からずに混乱する俺達に、男は笑みを浮かべたまま続けた。 「そうだな… ただ殺すだけじゃつまらん。坊主、お前にも力を分けてやろう。俺と勝負だぁ…」 男は、小さな… 青く透き通った石を、ポケットから取り出した。 「ゲヘヘェ… お前が勝ったら、それはお前にやる。俺が勝ったら、命を貰うぞ…」 男は、"青い石"をこちらに投げながら言うと、また花を取り出した。今度は別の花だ。 「ヒヤシンス… 花言葉、"遊技"…」 瞬間、男の手から、花が… 小さな弾丸となって、撃ち出された。 「うわぁッ!?」 …間一髪でかわした。「スターチス」の効力は切れていたようだ。しかし、こちらには反撃の手立てがない。 どうやら、「華闘士」というのは、自分の持つ花の花言葉を攻撃に変換する能力のようだ。 にわかには信じ難いが、目の前で起こっている現実だ。認める他はない。 もはやこれまでかと思った、その時… 何かを俺に手渡しながら、ユリが言った。 「この花を使って! 花言葉は…」 「ゲヘヘェ… 何をコソコソ喋っている? 何もないなら、そろそろぶっ殺しちゃうぞ〜? そら、"ヒヤシンス"!」 男は、また「ヒヤシンス」を使ってきた。 一か八か… 俺は、反撃を試みた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |