《MUMEI》
何度でも。
今の品川は、僕らと同じ、何らかの影響を受けている。
赤い瞳。
一体何なんだ。
僕らに一体……何が起きてるんだ?
品川が吼える。
気迫のようなものが、体を震わせる。
全身の痛覚が徐々に、徐々に戻ってきている。
《俺》に、限界がきている。
早々に終わらせなければならない。
容赦してはいけない。
何度でも立ち上がるなら、何度でも倒してやる。
何度でも、何度でも。
品川の左手が伸びる。
それを左に反れてかわし、右手の拳を貫くように腹部を抉る。
「っぐぅ」
拳に激痛が走る。
人を殴る感覚が、蘇る。
歯を軋むほどに食い縛る。
「ッ!?」
倒れない!?
僕の右腕を両手で掴む。
「ぐ、あああぁぁぁああああ」
ギリギリギリ、と掴む力は、品川のボロボロの身体では到底出すことのできない握力だ。
その掴んだ腕をぐおん、と僕の体を振り回す。
体は完全に浮き、壁に激突した。
「かはっ」
息が詰まり、噎せる。
体が……鈍い。
いつの間にか、品川は僕の前へと接近していた。
再度、体が宙に浮く。
今度は投げ飛ばされたわけではなく、首を絞められて。
「…………ッ」
意識が遠のく。
力が抜ける。
ヤバい……本当に……死ぬ。
死。
「ダメぇぇぇええええええ」
うっすらとする意識の視界の片隅に、品川にしがみついたミクちゃんが見えた。
ダメ……だ、ミクちゃん……。
「離して!薫くんを離してよ!」
叩いたり、蹴ったりしているのに、微動だにしていない。
赤い瞳がミクちゃんに向く。
品川は何も言わない。
だが、邪魔をするな、そう思っていることはわかった。
僕の首から片方の手を離し、ミクちゃんを払う。
半分、解放された。
浅い浅い呼吸をし、ミクちゃんが稼いだ一瞬の隙を突く。
手では届かない。
「くおっ!」
お腹に力を込め、足を品川の顎にぶち当てた。
その衝撃で、品川は倒れ、僕は完全に解放された。
「う゛っ」
今まで生きてきて、したことのないくらい噎せる。
涙が溢れる。
「はあ、はあ、はあ」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫