《MUMEI》
小憎たらしいアイツ。
泥沼化していた。
「はあ、はあ、はあ」
これは、決着が着くとしても、二人とも無事では済まない。
払い除けられたミクちゃんは倒れたままの態勢で、気を失っていた。
守らなきゃ。
立たなきゃ。
「……ッ」
ガクッと、全身の力が抜ける。
ダメだ……。
もう体に力が入らない。
衣擦れの音。
僕が出している音じゃない。
ミクちゃんのものでもない。
品川は、立った。
だが、先程とは違い、肩で呼吸をしている。
分かりやすい程に、僕に敵意を向けている。
瞳の色が、元に戻っている。
だが、どちらにせよ、絶望的には変わりない。
僕の体は、もう動かない。
「はあ、はあ、はあ」
品川はもう何も語らず、一直線に僕に向かってくる。
もう僕しか、見えていない。
仰向けに倒れている僕の腹部を踏みつける。
「ぐふ……」
僕はもう……勝てない。
ちく……しょう。




「そこまでだ」




僕がよく知っている、小憎たらしいアイツの声が響いた。

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