《MUMEI》
村上 勇人
   〜麗羅視点〜


朝早く学校に行き、誰も居ない教室で、静かな時を満喫する。


それが小学校からの日課だったのに……。


今日、いつもと同じように教室に入るともう誰かが来ていた。


見ない顔だな……といってもクラスメートの顔もまだ覚えていないが。


私の視線の先には、既に教室に来ていて窓の外に目をやる男子生徒がいる。


私の日課が……。


私は、男子生徒から目を逸らし、相手に悟られないように息を吐き、肩を落とすと自分の席に歩いていく。



「あの……!」


いきなり話しかけられビクッと肩が揺れる。


視線を下に向けて歩いていたので気がつかなかったが、男子生徒は私のすぐ近くまで来ていた。


視線を上げると、男子生徒と目が合う。


すると男子生徒は、すうっと大きく息を吸い言葉を吐き出す。


「三島さん!俺、2組の村上 勇人(はやと)って言います!


あなたに一目惚れしました!友達からでいいので……


俺と友達になって下さい!」


言い終わると、ガバッと頭を下げる。


暫く男子生徒――村上の勢いに目をパチクリさせていたが、次第に村上の言ったことを理解し始める。



友達……?


友達からって昨日、歩が言ってた。


歩と同じ関係ってこと?

だったら、せっかく友達になってくれるって言ってるし、断る理由もない。


「友達なら」


私がそう答えると村上は飛びっきりの笑顔で、はしゃぐ。


「えっ本当に!?うわっ嬉しい!!断られると思ってた〜!」


私の1言でこんなに人を笑顔にさせられるんだ。


友達ってやっぱりいいもんなんだな。


「私も嬉しい」



ガラッと教室のドアが開き人が入ってきたのを見ると、村上は片手を上げ「じゃあまた!」と言って自分のクラスに帰って行った。


私は、自分の席に着きいつものように本を開く。


しかし本の内容が頭に入ってこない。気がつくと昨日のことを考えていて、3人が来るのを待っていた。


まだかな……。


人を待つのは長く感じるけどなんとなく、ふわふわした幸せな気持ち。


こんな気持ち初めて。



私が言った言葉でこの先どうなるかなんて、何も考えずただ幸せに浸っていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫