《MUMEI》
告白
「...だから...」

宏は一瞬止まって
私の顔をじっと見る。

「...?」

「俺は...怜子ちゃんが好きなんだよ」

真剣な目。
でも二人共裸で、
ベッドの上で、
ロマンチックなのか
そうじゃないのか
分からない状況の告白。

「あ...
わ 私には彼氏がいるから...」

「知ってる」

「...っ」

「それでも俺は、怜子ちゃんが好きなんだよ。
...なぁ、俺とセックスしちゃうぐらいなんだからそいつに不満があるんじゃねぇの?」

「不満なんて...」

「じゃあセックスが足りねぇとか」

「それは...」

「やっぱり。満足できねぇんだな。俺なら、絶対満足させれるぜ?」

そんなの、分かってる。

何回も宏とセックス
してしまうのは、
そういう事なのだから。

「駄目...なの」

「駄目じゃねぇよ」

ドキン、ドキン

さっきからずっと
胸が高鳴ってる。

「俺にしろよ...。好きなんだ...怜子」

“怜子”。
初めて宏に
呼び捨てにされた。

その瞬間、もっと
鼓動が速くなった。

「宏...」

頷いてしまいそう。
この真剣な瞳に
捕らわれて、
一生離されたくない。

「怜子...」

そっと近付く顔。

ここでキスしたら、
宏と付き合う事に
同意した事になって
しまうのだろうか。

そんなのは駄目。

...駄目なのに。

私はゆっくりと
目を閉じる。

宏の息遣いが聞こえ、
もうキスされると
思ったその時。

ガチャッと
玄関のドアが開く音。

「ただいまー」

お父さんだ。

私が驚いて
目を開けると、
宏の顔は寸前の所まで
来ていた。

「宏...お父さん帰って来たから...服とか着なきゃ...」

「...」

黙って私から離れる宏。

お互い無言で服を着る。

服を着終わって
部屋を出ようとしたら
二の腕を引っ張られた。

「えっ」

ちゅっ

キスされた。

「俺、諦めないから。さっきの返事はまだ待つよ。急かして悪い」

そう言って
二の腕から手を離す。

「...うん」

高鳴る胸を抑え、
どうにかそれだけを
言って部屋を出た。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫