《MUMEI》
理由と口論
「そもそも、私は諒がよく知っている通り一般生徒であり、D組。特別生徒からの反感を買うことになるでしょう」

「そうだね。…でもそこは俺が何とかするし、瑞希の安全は保障する」


諒はこう言うが、瑞希には彼女ら王子ファンが一般生徒の特に取り柄もない冴えない女が彼らに近付く権利を与えられるなど言語道断。

彼女達の報復、言いかえれば八つ当たりは目に見えている。


「安全は保障出来たとしても、私は断るよ。
第一に、生徒達の基準及び手本とならなければいけない立場に私がつけるとは到底思えないしね」


口調も明るく、冗談混じりに言っているように聞こえるが瑞希の瞳には的確な拒絶があり、鋭く瑞希の目が光ったのを諒は見逃さなかった。


「俺は瑞希が今の自分の状況に甘んじていて、D組にいるという事が納得いかないよ。
瑞希がそのような人間だとは俺には到底思えなくてね」


対する諒も口調は穏やかであるが、言葉の節々に瑞希に対する挑発が見当たる。


だが、それだけで逆上するほど瑞希の精神も子供ではない。

口を開こうとしたが瑞希は言葉を発する事は出来なかった。




「入るよ、諒」


可愛らしい鈴を転がしたような声の持ち主……結菜だった。
その後ろには、他の王子達も揃っている。


その事を確認すると、瑞希はカップを置き立ち上がった。


「…では、“北川会長”この件についてはまた日を改めると言うことでよろしいですか?」

「あぁ、いい返事を期待してるよ。__瑞希」


わざと瑞希を王子達の前で下の名前で呼んだ諒を軽く睨みつけると、綺麗に一礼し、扉の前でも礼をしてから王室、もとい生徒会室を出た。


“彼ら”が、瑞希の話をしている事など露知らず。

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