《MUMEI》
来訪者。
「ぅあっ!?」
見覚えのある天井。
……懐かしい。思い出したくてもないけど。
起き上がる。
「ぁぐ」
もうズキズキとかのレベルじゃない。
バギバギ痛い。……大差ないか。


「やあ、お目覚めかい?でも、もう少し寝ることをオススメします。身体、痛いんでしょう?」


「……?」
声のする方へ振り向く。
ベッドに腰かけている女性には、見覚えがあった。
「君は……小鳥……遊……晶さん……?」
「久しぶりだね」
ニコッと笑った。
「何で……君が?」
「みんな大変だから、君が目を覚ますのを待てる人がいなかったから、ワタシがみんなの代わりに待ってみました」
えへ、と微笑む。
「そっか……そうだったんだ……」
みんな大変。そりゃそうだよね……。
2年前と同じ……いや、もしかしたら命も落としていたかもしれない。
「あっ!み、美鶴は!?美鶴は大丈夫!?」
「天草美鶴なら大丈夫だよ。足に怪我をしちゃったから軽傷とは言えないけど、風影響介が命を賭して守ったよ。もちろん風影響介も無事だよ」
無事……か。
確信していた通りだった。
新斗を信じたから。
それでも……やっぱり……ホッとした。
「風影響介は重傷なのに木刀一本で天草美鶴を助け出したんだ。すごいよね」
「……え!?響介そんな状態で……!?すごいっていうか、滅茶苦茶だな……」
「天草美鶴は風影響介に叱咤激励し、状況を覆した。佐久間新斗も警察を動かした。君達は本当にすごいよ」
「うん……みんなすごい。僕には……足元にも及ばない」
「何を言っているのさ。君が一番すごいんじゃないか、神名薫」
「え……?」
小鳥遊晶は不敵に微笑んだ。
「まさかリミッターとの感覚共有を断絶して、表の人格の痛覚を遮断するなんてね。さすがのワタシもそれは予測できなかったよ」
「は、はは……。僕もこんなことできるなんて…………え?」
今……この子はなんて……言った……?
何で……。
何で……?
「何で君がそれを知ってるの!?」
リミッター……二重人格を知っているのは何人かいる。
だからそこに驚きはない。……いや、少しは驚くけど。
でも……痛覚遮断は誰も知らないはずだ!
「君は……一体何者なんだ!?」
小鳥遊晶の微笑みは、表情を変えていないのに影が入り、不気味に見えてきた。

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