《MUMEI》
ゲージ タイムズ
「うおおぉぉぉおおぉぉお!?」

突然の事に頭が困惑し、とりあえず回る視界に叫び散らしてもう一分が経つだろうか。

叫び続けて一分というのは、小さな数字に見えるかもしれないが、結構な事だと思う。

「落ち着け、俺!」

息を吸い込み、そう断言する。

先ずは落ち着いて考える。こうやって冷静を保ち始めると、この仮想空間の流れの様なものを流れる姿勢が安定してきた。

付近にはサヤとサウザーは勿論、アイすらも見当たらない。

実は、俺はこの景色に見覚えがあった。

「ここは…ログアウト時の帰想空間……!」

ゲームを終え、ログアウトを選択した後の現実世界へ帰るまでの処理時間滞在して浮遊する空間、帰想空間。
通称ロスタイムと呼ばれるものだ。

しかし、現在のミリオンヘイムオンラインでは使われる筈のない機能だ。

強制ログアウトの、ほんの一瞬前にサヤが放った一言を考えれば、少しは見えてくるものがある。

矢吹だ。

何らかの手段で矢吹は現実世界で接触したサヤに今回の作戦やらを伝えた。

そして、それをサヤが馬鹿正直に実行したって訳か。

「はぁ…。」

ただただ溜め息が溢れるだけである。

何が起こるかを事前に知っていたなら少しは相談してくれてもいいものだが、アイツはそんなこと考えもしていないんだろう。

どうせ矢吹に話すな、と言われていただろうしな。

「…そういえば、サヤは何処に行ったんだろう。ま、俺と似たようなもんか。」

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