《MUMEI》
事故
「あー…き 気にしなくていいよ」

「...?」

「今のは...事故だし...うん」

もしかして。

「...私が初めて、とかじゃないですよね?」

恐る恐る聞いてみる。

「...!!」

高橋さんの
頬が赤く染まる。

初めてなんだ、
朝の宏は。

「ご ごめんなさい!!!」

「えっ?あ、いや...大丈夫だよ、支えられなかった僕も悪いし...」

目をそらしながら言う
その姿に説得力はない。

やっぱり気にしてる。

そうだよね、
ファーストキスだもん。

「...すいません」

「ホントに気にしなくていいからさ」

「...はぃ」

朝の宏が夜の宏を
知ったら
どうなるだろう。

男とセックスしてた
なんて知ったら、
自分の体が気持ち悪く
なるのだろうか。

朝の宏は純粋。
知らない方が
幸せなんだろうな。

「...あの、高橋さんは彼女とかいなかったんですか?」

「...痛い所をつくね。あぁ、いた事ないよ。ただ、相手がいなかったとかじゃなくて、僕が学業と仕事に打ち込んでしまったからだ」

「...なるほど?」

相手がいなかった訳では
ないとわざわざ
主張してくる辺りが
怪しいけれど、
とりあえず納得。

ふふ、でも嬉しい。
朝の宏の初めてを
貰えたんだ、私。

宏に
惹かれている私がいる。

「とりあえず...怜子ちゃん、遅刻しちゃうからご飯食べようか」

ニッコリ笑う宏。

「はい」

私もつられて笑った。


――――――
――――――――


「怜子!」

「あ、麻里ちゃん」

「今日遅かったじゃんかぁ!!どーしたのよぉ」

「あー…寝坊しちゃって」

「なんだー、心配させないでよね」

「ぁは、ごめんね」

「んーん、来たからいいよ」

「ありがと!麻里ちゃん大好き!!」

「私も怜子好きー」

ぎゅう。

抱き合う二人。
恋愛的な意味じゃなく、
私は麻里ちゃんが
大好きだ。

いつも私の味方で、
頼もしくて、可愛くて。

「よしっ、じゃあ今日も一日頑張ろうね!」

「うん!」

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