《MUMEI》

 「こんばんわ。夢喰いさん」
その声を来たのは適当な人間の夢に入り込み、惰眠を居た貪って時のことだった
聞こえてきたソレに眼を覚まし、身を起して見れば
ソコに立って居たのはあの妹
「……なんで、此処に居るの?」
此処は、他人の夢の中
夢の中の登場人物としてこの中に居るのならば解る
だが、この少女は明らかに違って居る様に見える
「……君は、夢を渡れる?」
もしかしたらと思い尋ねる事をしてみれば
妹は何を答えて返すでも無く、だが微笑んで見せるだけ
だが、その背後に馬の様な影を、メリーは見たような気がした
「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
その影を未だ視界の隅に捕えたまま
笑みを浮かべた表情のままの妹へと改めて問う事をする
何ですか、と今度は答えてくれるらしい妹へ
「……君には、そいつの姿が見えてるの?」
この問い掛けには素直に頷き、徐に手を伸ばす
伸ばした先に現れたのは、ナイトメア
メリーの姿を見るなり、その口元にニヤリ嫌な笑みを浮かべて見せた
「……ちゃんと姿見せなよ。そうやってずっと隠れてるつもり?」
聞いては見るが返答はない
ユラリその姿は歪み、そして消えていった
「夢喰いさん?どうかしたの?」
ナイトメアが消えていったソコをしばらく睨み付けていると妹からの声
メリーは溜息を静かに吐くと、何でもないと首を横へ
「ねぇ、夢喰いさん。私と、お散歩しましょ」
言い終わるや妹はメリーの手を取った
酷く冷たく、そしてソコに在るのか無いのか分からないあやふやな感触
到底、ヒトのソレではない
夢の中とはいえ、ヒトにはヒトとしての感触がある
だがこの少女には全くそれが感じられない
「……君、本当に生きてるの?」
「どうして、そんな事聞くの?」
メリーの問い掛けに小首を傾げて見せる妹
自分はちゃんと生きているのに、とでも言いたげに
メリーの手を握るその手に妹は力を込める
だが、やはり違う様に感じられてしまう
「……君のお兄さんが、心配してたよ」
当てもなく歩き続ける中、徐にそう告げてやれば
妹の脚がピタリと止まり、またメリーを見やった
「お兄ちゃんが?どして?」
自分が置かれている状況がいかに危険か
どうにも分かっていないらしい妹は小首を傾げて見せる
何と伝えてやればいいのだろう
はっきりと伝えてやれればそれが一番手っ取り早い
だがそれはなぜか憚られる様な気がして
「……最近、君の夜遊びが酷いってね」
誤魔化すようにそう返してやれば、少女は頬を僅かに膨らませ
「夜遊びなんてしてないもん」
顔を逸らす
説教など聞きたくない、とメリーへと舌を出して向け
少女は身を翻すとそのまま姿を消した
また別の夢に渡ったのだろうか、それとも
「……ナイトメアの、処かな」
少女の周りに漂う、馬のような影
ユラリ漂いながら、その影はまるでメリーを誘う様に何処かへと歩き出す
何処へ、行くつもりなのだろう
分かる筈もなくメリーは取り敢えずその後を追ってみる事に
「……またお前か。夢魔」
進んでいけばそこにナイトメアの姿
今までとは違い、随分とその姿ははっきりと見える
「……漸く姿を見せてくれた」
見えたソレに、メリーは口元に笑みを浮かべ
足元を擦りながらにじり寄り、その間合いを詰めていく
「その子の悪夢は余程美味しいんだね。君がそんなにも濃く見えたのは数十年ぶりだよ」
「そうかも、しれないな」
「……何をしようとしているのか、聞いてもいい?」
「聞いてどうする?」
「さぁ。然して面白くなさそうな事なら、無駄だし、止めるかな」
「止めるか?この俺を」
「止めてあげるよ。君は多分、昔の僕と同じだから」
何かを思い出し、僅かに眼を細めるメリー
ナイトメアは何の事かと怪訝な顔だが、それ以上メリーは何を言う事もしない
「……兎に角、あの子の夢から出ていってくれる?」
それだけを最後に伝えてみるがナイトメアからの返答は無く
僅か肩を揺らすとメリーへと一瞥を向け
その口元へと嫌な笑みを浮かべて見せるとそのまま姿を消した
結局、妹は見つけられず

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