《MUMEI》
くしゃみと噂
「…ヘックション!!」


それまで静かだった大きな校舎の一角にある部屋は、くしゃみの音がなることで静かではなくなってしまった。

とは言え、今現在この部屋にいるのはくしゃみをした茶髪の青年と窓際で本を読んでいる黒髪の青年の二人だけなのだが。


「あー、誰かがオレの噂をしているなっ!!……もしかしてオレの天使(マイエンジェル)がオレを呼んでいる!?いやー、やっぱり可愛……」


茶髪の青年は恐らく『可愛い』と言いたかったのだろうが、言葉をもう一人の青年に遮られた為、それは叶わなかった。


「いい加減黙らないと俺がその口を塞ぐよ。…接着剤か溶接かホッチキスか糸で縫うかどれがいい?」

「スミマセン、黙ります。…つか、なんでそんなに所持してんの!?」


彼に冷たい視線を向けられ条件反射的に謝ってしまった青年は、彼に抱いた疑問をあげた。
実質上は叫んだ、なのだが。


「決まってるだろ。風紀委員でもあるんだから、悪い事をするやつにはそれなりの罰が必要……だろう?
そんな事も分からないの?
馬“か”鹿なの?……あぁ、馬“と”鹿なの?」

「それオレのこと馬鹿っていってる!?」


「すごいな。お前みたいな馬鹿でも分かったんだ」

「もう隠す気なしか!?てか、断言しやがった!」


心行くまで青年をいじった黒髪の彼は、また本に目を戻した。


「…選ばせてあげる。今すぐ死ぬか、校内の見回りにいくか、どっちがいい?」

「見回り行ってきますっ!!」


彼の放つオーラが本気な為青年はすぐに叫んでから慌ただしく部屋をでていった。


青年が居なくなった事で静寂とする部屋の中で一人彼は溜め息と共に呟いた。







「…………瑞希」


声はか細いものだったが静かなせいか、やけに部屋に響いて聞こえた。

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