《MUMEI》

そういえばもう一人、客がいた気がするな。確か、雑誌売り場んとこに


様子を見るため、俺はレジカウンターを出て売り場に行った。


いた、


そいつは酷く、怯えたような顔をしていてうずくまっていた。


「…大丈夫っすか」


本当にちょっと心配になるほど怯えたまんまだったから、俺は声をかけた。


すると、ソイツは我に帰ったみたいで


「あっだっ、大丈夫ですっ」


だいぶどもっている。
ソイツの喋り方は随分とたどたどしかった。
風貌的には中年オヤジなんだが、なんとなく頼りない雰囲気。


「あ…そうですか」


たぶんこれは、もとから小心者なタイプだな。


なんとなく察して、適当に答えると俺はレジカウンターに戻った。


本当はもうレジカウンターなんかにいなくてもよさそうなんだけど、なんとなくそこが自分の定位置な感じがしたから戻った。

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