《MUMEI》
気まづい
「あの...ホントにすいませんでした。誰もいないと思ってたので...」

着終えて
階段を降りるなり、
宏に謝る私。

「...一応僕も男だからさ、気をつけなよ」

「は...はぃ」

最もな意見を言われて
頷くしかない。

もう家であんな格好
するのはやめよう。

「それと...怜子ちゃんさ...朝の事...」

「あ...」

反射的に唇を抑える。

「...ホントにごめんな」

「あの...気にしてないので...高橋さんも気にしないで下さい」

「...ありがとう。
こんなおじさんとキスなんて、気持ち悪かったろ...?」

思いがけない言葉に
びっくりして固まる。

「...え?」

「僕は君よりも13歳も歳上なんだ」

「...分かってます」

「...彼氏、いるんだっけ?」

「...はい」

「なおさら僕みたいなおじさんとキスしたら嫌だろ?」

そんな事決めないで。
私は...宏の事...。

でも何も言えない。

私は夜の宏に
心惹かれているから。

「あ...の...逆に聞きたいんですけど、高橋さんは私とキスしてどう思ったんですか?」

「...正直言って、ラッキーだったよ。女子大生とキスしたんだから」

「...」

嬉しい。

「気持ち悪いよな、ごめん」

「...そんな事ないです!」

私は思わず声をあげる。

驚いた宏の顔が
視界に映り、
途端に恥ずかしくなる。

「...わ 私は...」

「...?」

どう伝えたら
いいんだろうか。

伝え方が分からない。

「高橋さんとのキス...嫌じゃなかったです...」

「え!?」

二人の顔が赤くなる。

うぅ...
恥ずかしぃ。

「いや...あの、僕に気を遣わなくていいから」

「気なんて...」

上手く伝わらない。

すごく、
もどかしいこの気持ち。

分かってよ。
気になるんだよ、宏が。

その思いのまま
宏の襟元を掴む。

そしてぐいっと引っ張り
ちゅっと音をたて、
軽くキスをする。

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