《MUMEI》

向けられた背に、片岡は何か痣がある事に気が付いた
何の痣なのか、問う事をしてみれば
「それが私の星だよ。……一つしかないけどね」
少ないだろう、と相手は自嘲気味に笑う
天道虫が背負う星
そう言えば七星にもあった事を片岡は思い出す
「……七つ、だったな。確か」
傍らに居る七星へ、確認するかの様に呟く
小さく頷く七星の様を見、相手の顔からは笑みが失せる
何故か刺すような視線で七星を見やり、そして
「あんたは七ツだってのに、何でこんな処に居るんだい!?」
癇癪を起したかの様に相手は七星へと手を伸ばし
片岡の制止にも耳を貸す貸すことなく、七星の着物を無理矢理に剥いでしまった
「あんたは、愛されていたはずだ。なのに、なんで!?」
何故ここに、地の上に居るのか、と相手
言い寄られる七星は、だが向けられる恕の感情に怯え片岡の背に隠れてしまう
「人の陰になんて隠れてんじゃないよ!この裏切り者!」
七星へとまた伸ばされた手、明らかに危害を加えようとしている事が知れ
その手が七星へと触れる寸前、片岡が掴んで止めていた
「首を突っ込むんじゃないよ!ヒトの分際で!!」
相手は癇癪を起したかの様に怒鳴り始め
片岡の手を振り払うと、その勢いのまま片岡の頬を平手打つ
だが片岡は何を言って返す事もせず
息を切らし、肩を激しく上下させるばかりの相手を唯々見やるばかりだった
「……あんた、その虫と居るとその内に死ぬよ」
僅かばかり落ち着いたらしい相手が片岡へと向け放った言の葉
まるで強迫だと、片岡は相手へと一瞥を向けてやりながら
「……言いたいことは、終わったか?」
酷く冷静な声を向けてやっていた
相手は更に怒りの感情を顕わにし、片岡を睨み付けるが
これ以上、此処での問答は無駄だと悟ったのか、身を昼宇賀エス
「……だから嫌いなんだ。ヒトなんて」
ソレだけを吐き捨てると相手はその場を後に
その背を暫く睨み付け、溜息に肩を落としていた
敵ではないと言いながらも、その実向けられたのは嫉妬と憎悪
相手はそれ以上何を言う事も無く
片岡へと睨む様な視線を向けると、踵を返した
その背を片岡もまた睨む様に見やり
人混みに紛れ見えなくなるまで、その場から動く事はしなかった
「……主」
七星が袖の袂を引き、視線を合わせてやるため膝を折れば
頬に、その小さな手が触れてきた
痛いかを問われ、瞬間何の事かと思ったが
先に叩かれてしまった事をどうやら気に病んでしまっている様で
何度もいたわるかの様に触れてくる
天道虫にとって、ヒトはそれほどまでに疎ましい存在なのだろうか
六星といい、先の相手といい
そんな事を考え、片岡はふと七星を正面から見据える
目の前のこの天道虫も、いつか自分に憎悪の念を抱いてしまうのだろうか、と
「主、ほっぺた腫れてる。大丈夫?」
ぐるぐると柄にも無く考え込んでしまえば、触れてくる七星の手
小さく、柔らかな手が何度も触れ
そのくすぐったさに僅かに身を竦めるが、同時に安堵に肩を揺らした
「さして痛くはないから、気に病むな」
大丈夫だから、と続けてやるも七星の表情は晴れないまま
その様に片岡は笑みを苦笑へと変え、七星の頭をなでてやる
髪を梳いてやればくすぐったいのか、七星ははにかむ様な表情になり
だがやめろとは口にする事無く、されるがままだ
「……主も、同じ人の筈なのに」
この手が触れてくれるのはひどく心地がいい
何時もこの手に縋ってしまっているのを自覚しながらも
否、それゆえに片岡から離れられずにいるのだ、と
「主、ごめん、なさい」
「七星?」
行き成りの謝罪に、片岡が何の事かを問うてみるが
七星は緩々と首を横へと振ると何でもないを返す
「……主、お腹すいた。何か、買って帰ろ」
帰路を進みながら七星からの申し出
珍しいと僅かに驚いてしまった片岡だが
都合よく手近に商店を見つけ、そこへと入ってみる事に
様々並ぶ食材を前に、何がいいのかを悩み始める七星
散々悩んだ末七星が手に取ったのは秋刀魚
「このお魚、主好き。これにする」
片岡の好みを覚えていた様で
店主へとソレを包んで暮れる様頼む

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