《MUMEI》
ヤンキー先輩と天使
その日は平穏な日、

……そうなるはずだった。


“彼”と“彼女”は2−Sの所属であるにもかかわらず、別校舎の2−Dを訪れていた。

次々と学園のアイドル達に接触してしまう事と現在目の前にいる会いたくない人NO,1に君臨する人との遭遇に瑞希は頭を抱えた。

それまで金髪の彼と茶髪の彼女をジトッと睨み付けていた瑞希だったが(金髪の方は少し顔を上げないと睨めないのだが)やがて諦めたように深く息を吐いた。


「で、何」

「え?何もないけど……」
「はぁ?」


じゃあ来るな!と思わず叫びたくなった衝動を抑え込んで瑞希は横にいる彼に目を向けた。


「ひとついいか」

「はぁ」

「結菜に話し掛けるな」


翔に言い返したい気持ちは山々だったが、余計面倒なことになりかねないので瑞希は疲れきった様な顔をして回れ右をした。


「なら帰ります。というか帰して下さい」

「あ?お前、結菜をここまでこさせといて帰る気か!!」

「私にどうしろとっ!?」


今度こそ思いっきり盛大なツッコミを翔に入れてから顔だけを二人の方へ向けた。


「用件聞いたら帰るからね」

「あ、うん。あの……これから一緒にお昼ご飯を食べよう?……駄目?」


身長的に瑞希の方が高いため自然と上目遣いになり、その上『お願い』のポーズまでする結菜の破壊力は相当なものである。

間近で見ていた男子生徒数名がその場で倒れた事は言うまでもない。


「……分かったよ。じゃ、帰るから」

「あ、ごめんねっ!じゃあね」


翔をポディーガードのようにして歩いていく結菜を尻目に瑞希は重い溜め息を吐き出して教室に戻った。

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