《MUMEI》
忠告と愛情
あの後宏は、
意外にもすんなりと
部屋に帰って行った。

ただ、一つ
私に忠告をして。


―――――
――――――――

次の日、
私は宏に会いたくなくて
いつもより一時間も
早く学校に登校した。

誰もいない
静かな教室で一人、
勉強を始める。

最近サボってたから
たまってるのよね。

数学を
やり始めて間もなく、
空の雲行きが
怪しくなってきた。

やだ...
雷とか鳴られたら困る。

私は雷が大の苦手。

怖くて、一人では
とてもいれない。

早く誰か来て!!
そう願うも、
早すぎるこの時間。

誰も教室に来ない。

こうして
怯えている間も、
空がどんどん黒い雲に
覆われていく。

私は慌てて
灯呉に電話した。

...お願い、出て!!

プルルルルル...
プルルルルル...

「...はい、もしもし?」

出た...!

「灯呉...灯呉...!どうしよう私...今一人で...」

ピカッ

「きゃあっ!」

「!?どうした、怜子!」

「怖い...怖いよぅ...」

「...あっ、雷!...まさか今学校か?」

「うん...」

「何でこんな早く...って、そんなのは後だな!待ってろ、今すぐ支度して行くから!」

「...うん」

かっこいいな、灯呉。
私の為に。

きっと、さっきまで
寝ていたんだと思う。

寝起きの声だった。

ピカッ

「きゃっ!!!」

「いいか、怜子。絶対ぇ電話切んなよ!このまま繋いどけ!」

「...うん!」

優しい。
すごく優しくて、
すごく安心する。



それから20分程
他愛のない話をして、
教室のドアが
勢いよく開いた。

「!?」

「怜子!!」

ずぶ濡れの灯呉が、
私の元に駆け寄る。

「大丈夫か!?」

「...灯呉ぉ」

私の顔はぐちゃぐちゃに
泣いていた。

「...怖かったよな、わりぃ、遅くて」

ぎゅっと優しく
抱き締められる。

...安心する。

「んーん、灯呉、すごい早かったよ。それに、ずっと声聞いてたから安心した」

「...そうか、良かった。ありがとな」

「お礼を言うのは私の方だよ...。ありがとう、来てくれて」

どちらからともなく
唇を重ねる。

灯呉が、ここにいる。

それだけで
気持ちが温かくなり
恐怖心が
大分落ち着いた。

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