《MUMEI》
涙雨
今更、気が付いたってもう遅い。職員室に行けば、会えるだろうがそんな勇気だって持ち合わせちゃない。くだらないやり取りの想像は容易につくが、次に先生と2人で会ったら、彼がどんな反応をするのかはまるで見当がつかない。

何もなかったような顔して「おー、中原。わざわざ俺に会いに来たか?」なんてニヤニヤしながら言うのだろうか。それとも「何か用?」って、見たことのないような顔で冷血に拒絶されるのだろうか。……それとも。それとも、また本気で困ったみたいな顔をするのだろうか。――分からない。

いっそのこと、先生の前でも仮面をつけて自分を演じていれば良かったのかもしれない。最初に会った時も「もう毎日めちゃくちゃダルいんですよー」くらい言ってのければ今、こんなに苦しい思いなんてしなくて済んだのかな。

やっぱり、永遠なんてなかった。

引き金さえあれば永遠なんて脆くも崩れ去る。両親の関係も、私と友達の関係も、私がいる環境も。そして、私と先生の関係も。

尤も、私と先生の繋がりなんて糸よりも細いもののようだったし、亜梨沙の言葉、私の言葉、先生の言葉、どれが引き金だったのかも定かではないけれど。

惹かれてたなんて言ったら、先生は笑うかな。私だって、笑っちゃうよ。どこにそんな点があるんだ、なんてさ。

でもね、先生。

今、外は悲しいほどに涙雨が降ってるよ。

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