《MUMEI》
ママ
ママは今、「母」の国にいる。いつ帰ってくるだろう?本当は知っている。ママは帰ってくる日をちゃんと言っていたから。
ママは、私を連れて行かない。いつも一人で行く。「お母さんは大丈夫。お父さんをよろしくね」ママはいつも、私の目をじっと見つめてそう言って出かける。
ママの国は遠い。パパは忙しいから、ママと私と一緒にママの国へ行く時間が取れない。
パパはママに「ルールーも連れていきなさいい」と必ず言ってくれる。私はいつもママが「そうします」と言ってくれるのを待っている。だけど、ママは絶対に私を連れていってくれない。
ママの国は素敵だ。何でママはパパの国にいるのか判らないくらい素敵だ。
私は今いるパパの国はもちろん好きだけど、たまに考えることがある。ママは、ママの素敵な国の方が好きなんじゃないかって。私がママの国を好きになると困るから、連れていかないんじゃないかと思う。
ママは不思議な人だ。私には完全に「お母さん」をやってくれるが、パパといると、時々小さな子どもみたいな感じがする。
私が「お母さん」と呼ぶと、「お母さん」に変身する。パパは「パパはママのパパになることがあるよ」と笑っていた。

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