《MUMEI》
わたし
私は名前が二つある。パパの国ではルールーと呼ばれている。ママの国では瑠璃と呼ばれている。どちらも本当の私の名前だ。
パパに聞くと「ルールーはママを大事にしていると言う意味だよ」と言う。ママに聞くと、「瑠璃はパパを大事にしていると言う意味よ」と言う。
小さい頃は、音が似ているだけかと思っていた。パパの国の人たちは、私のことを「ルーリー」と呼ぶ事もあるから。
パパは私の誕生日に必ず真っ白に輝く、真ん丸い宝石を一つくれる。ママとの約束なんだって。「瑠璃がお嫁に行くまで、誕生日には必ず贈ってください」って、ママが頼んだんだって。
私は最近やっと、この綺麗な物が大好きになったけど、小さな小さな時は全然嬉しくなくて、ママの鏡台の椅子の上に立って、一個づつ高いところから落としたことがあった。ママは、家具を全部どけて、ご飯の仕度もしないで、這いつくばって探していた。
私はお腹がすくし、つまんないので、あれは二度とやらなかった。だって、ママは怒らないで、「瑠璃が欠けちゃう」と言いながら、必死になって探していた。
多分私が3つくらいの時の話。
一生懸命椅子の上に這い上がって、立って、一個づつ、落とした。
ピンっ、びじゅじゅじゅじゅぅーと言う音がして転がっていった音が今も耳に残っている。
パパが後で聞いて、鏡台の方を見ながら「ルールーで良かった、瑠璃なら泣いても泣ききれなかった」と言った。
私はまだその時、白い宝石が入っている入れ物も自分に関係あるとは思っていなかった。

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