《MUMEI》 パパの夏の旅と秘密パパは外国によく行く。仕事で行く。大体どこに何のお仕事で行くかは判るけど、毎夏二週間出かける時は、なんとなくいつもと違う。 パパが出かけるまで、ママはとっても嬉しそうにしていて、パパはそうでもない顔をしている。 そして、パパを送りだすと、ママは玄関のドアの前でうずくまっている。 そして、パパが帰ってくるまで、ママの心はなんとなく遠い。 「ママの心もパパと一緒に旅をしているからよ」とママは言う。それなら、パパが遠くに行っている時、いつも一緒に旅をしていなくちゃおかしいと思う。なんで、夏の二週間だけママの心はパパと旅をするんだろう。そして、この二週間だけ、パパから私への連絡が、いつもと違う気がする。 夏が来て、パパが出かけて、ママが玄関でぼんやりすると私は思い出す。 パパが帰ってきたら聞かなくちゃ。いつもそう思うのに、パパが帰ってくると、ママがとっても嬉しそうにして、パパがママを一番に呼ぶのを聞いて、私もパパが帰ってきたのを喜んでいるうちに、聞くのを忘れてしまう。 パパが出かける前にいつもは言わないことを言うのも変だ。 「ママが一人で海に行かないように気をつけてね。それと、ママがお風呂に入っている時も、たまに声をかけるんだ。いいね。約束だよ」パパの心配は何だろう? ママの心がパパと旅をしているなら、ママもいっそ一緒に行ってしまえばいいのにと思ってママに言ったら、ママは小さく首を振った。 そして、やっぱり旅をしている感じで、ぼんやりしている。パパに言われなくても、海なんかはいったら大変だと、私にもわかる。 そして、ママにいろいろ聞くことができない二週間。 前へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |