《MUMEI》

コンピューター室に向かってただ歩く瑞希と蒼はやはり無言で歩いていた。



だがそれも瑞希にとって居心地の悪いものでもなかった。


意外と言われるかも知れないが瑞希は元々好きこのんで喋る様なタイプではないのだ。


なぜなら性格のせいで忘れがちだが瑞希の地位はボッチであり、そこらへんのリア充とは違う。


そんな瑞希と元々あまり喋ることのない蒼はお互いにいい距離感を保っていた。


だが、今回はその沈黙も長くは続かなかった。


「……パソコン、出来たんだ……」


意外にもその沈黙を破ったのは蒼だった。


「あー、……まぁね。……って、私そんなに馬鹿に見える!?」


さらりと込められた嫌味らしきものに瑞希は少しオーバーリアクションで反応した。


対する蒼は本当にそんな風に言った訳ではなかった為、珍しく少しだけ慌てたように(…とはいえよく見ないと気付かないのだが)表情を変化させた。


「…違う……ごめん」

「いや、全然気にしてないし良いよ」


そこで瑞希は気付く。



「…今日、午前授業だ」

「あ」


蒼もスッカリ忘れていたようで足を止めると瑞希を振り返り「…戻ろう」と言った。


ここで瑞希はもうひとつ自分が忘れていたものに気が付いた。


「… ごめんね。私少し用事を思い出したからいってくるよ。じゃあ、また」

「……また」


急いでいるようにも見える自分より数センチ程高い瑞希の背をジッと見つめる蒼はこの前とは違い、少し悲しそうに見えた。

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